オペラ解説:ヴェルディ「マクベス」成立から、あらすじまで

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オペラ「マクベス」解説 - テノール歌手:髙梨英次郎のトークです | stand.fm
ヴェルディ作曲オペラ「マクベス」をざっくり解説致します。 原作シェイクスピア。 大傑作で、力が入りました。 文字起こししたブログはこちら↓ 0.00〜 概要 0.41〜 作曲の経緯 6.35〜 内容、第1幕 15.02〜 第2幕 19.39...

こんにちは!テノール歌手の髙梨英次郎です。
本日もオペラ全曲をざっくり解説していきます。
オペラって面白いですよ!
今回は記念すべきヴェルディ10作目のオペラにして、今や代表作の一つとなった、金字塔「マクベス」です。
原作は、言わずと知れたシェイクスピア。


ヴェルディ自身が大好きな、シェイクスピアについに挑んだこの作品、そこに至るまでに積み上げた発展がここで一気に飛躍した、大傑作です。


まずは、作曲の経緯についてお話いたします。
前作「アッティラ」( https://tenore.onesize.jp/archives/92 ) の上演前に、実は生死をさまようほどの重病に見舞われていたヴェルディ。
医者からも数か月間の静養を命じられていました。
ヴェルディは温泉地で数週間休養をとりました。
日本の湯治みたいですね。
そこで一緒にいたのが、以前から親しくしていたマッフェイという詩人でした。

Andrea Maffei

ヴェルディはマッフェイとマッフェイの妻、両方といいお友達だったのですが、マッフェイ夫妻はこの頃、離婚したばかりでした。
温泉地では暇な時間も多く、離婚直後で傷心気味のマッフェイと話をする時間もたくさんあったのでしょう。

マッフェイははシェイクスピアやシラーなどをイタリア語に翻訳することもしていて、ヴェルディにオペラ作品の題材をいくつか提案したと思われます。なんなら自分が台本も書きたいと相談したようです。

それが、シェイクスピア「マクベス」と、シラーの「群盗」でした。
この頃、ヴェルディが契約を結ぼうとしていたのが、フィレンツェのペルゴラ劇場でした。
ルネサンス芸術や、オペラの発祥の地とされるフィレンツェでの、初めての新作発表です。
ヴェルディは、シラーの「群盗」には優秀なテノールが必要と考えたのですが、フィレンツェでは、お目当てのテノールを抑えることができず、それではと、バリトンを主役にして「マクベス」に取り掛かることにしたのでした。
台本は、いつもヴェルディに忠実な、ピア―ヴェ。
ただし、オペラの構成や、主なセリフはヴェルディ自身が考え、ピア―ヴェの仕事は、そのセリフを歌にできるように、詩の形に整えることでした。
ピア―ヴェが仕上げたものの中に、ヴェルディはいくつか気に入らない場面があり、その部分は、友達のマッフェイに頼むことにしました。
この「マクベス」に並々ならぬ熱意で臨んだヴェルディ。
いくつか有名なエピソードや、ヴェルディの言葉が残っています。
とにかく主役のマクベスとマクベス夫人を歌う二人には、

「ドラマを理解して、表現してください。むしろ歌わないで!」

と繰り返し訴えました。

さらにヴェルディは、

「夫人の声は、綺麗でなくていい、くぐもった暗い声がほしい!」

と主張していたり、第1幕の重要な二重唱を、何回も自らピアノを弾いて、本番直前まで歌手に練習をさせました。
今までとは全く違うものを作るんだ!というヴェルディの気合がうかがえます。
そうして迎えた初演。1847年3月14日、フィレンツェ・ペルゴラ劇場で、ヴェルディ33歳。


初演は成功しましたが、ヴェルディ自身は、「聴衆は完全に作品を理解しなかったようです」と友人への手紙に書いています。
ここまでお話したのが、「マクベス」の1847年初演版についてでした。


ですが、現在我々が耳にする、あるいは目にするヴェルディの「マクベス」は、初演から18年後、1865年に、パリのオペラ座で上演するために改定されたヴァージョンがほとんどです。
ヴェルディは、大好きなシェイクスピアをオペラ化した、この「マクベス」に大変な愛着を持っていました。
このパリ版上演の頃には、もう「リゴレット」や「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」、「仮面舞踏会」などの傑作を書いた後でしたので、ヴェルディの作曲技法も成熟し、この改定で、「マクベス」もかなりブラッシュアップされることになりました。

話の筋は変わりませんが、パリの劇場で上演されるオペラにおいては必須のバレエ曲が追加されたほか、いくつかの曲はまるごと書き直されたり、初演版をよりシンプルにドラマティックにしたところもあったりします。
1847年初演版、音源や楽譜に触れることが出来ました。
耳なじみがある分、やはりパリ版の方が改良されていると思ってしまいますが、初演版でも、オペラ冒頭から、魔女の表現、王ダンカンが殺されるところまでの緊迫感、夫人の夢遊病場面などは変わらず、初演当時から革新的な作品だったのだなと思わされますし、終幕の戦いの音楽は、むしろ初演版の方がかっこいいかもしれません。
パリでの上演は、当時の聴衆にその革新性は残念ながら理解されず、失敗に終わってしまいました。
その後、このオペラが正当に評価されるのは、20世紀に入ってから、となります。


ではここからオペラの内容に移って参ります。

「マクベス」
全4幕
 内容は原作にほぼ忠実ですが、もちろん省いた場面もあります。
 時は西暦1040年

登場人物
 マクベス:スコットランド・グラミスの領主にして、王ダンカンに仕える武将
 マクベス夫人:その妻
 バンコー:スコットランドの武将
 マクダフ:スコットランド・ファイフという地方の領主
 マルコム:王ダンカンの息子
また、マクベス、マクベス夫人につぐ重要な役として、

魔女の合唱、が挙げられます。
オペラは、短い前奏曲で始まります。
簡潔でありながら、ドラマの悲劇性がギュギュっと詰まった、素晴らしい導入の音楽です。


<第1幕>

森の中で。
雷鳴と共に魔女たちが現れて、会話をしています。

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もうここがいきなり凄まじい悪魔的かっこよさの音楽です。ぜひ聴いてください。
魔女たちは、人間の運命をあやつる能力を持っているようです。
魔女とされていますが、実際、正体は何なのでしょう。
もしかしたら、魔女の姿をした、ある種の情念の塊なのか、運命そのものの姿なのか。
そこへ、戦に勝利したばかりの、マクベスとバンコーが通りかかります。
魔女たちは彼らに声を掛けます。

「どうも、マクベス様、グラミスの領主さま」
ここまでは良いのですが

「どうも、マクベス様、コーダーの領主さま」
ん?コーダーはまた別の場所で、マクベスの領地ではありません。

「どうも、マクベス様、スコットランドの王様」

…え?何を言っているのでしょう。  

それを聞いたマクベス、無言で震えています。
まるで自分の密かな野望を言い当てられたかのように。
バンコーが

「俺にもなんか言ってくれよ」
と言うと、魔女たちは  

「あんたは王にはなれないが、王の親になる」
というこれまた謎の言葉。  

そして魔女たちは消え去ります。
呆然とする二人のもとに、王からの使者たちがやって来ます。
彼らは、マクベスがコーダーの領主に任命されたことを告げました。もとの領主は、罪を犯し、処刑されたとのことです。
魔女たちの予言が見事に的中しました。…ということは、スコットランドの王になるという予言も…  

心にそれぞれ思うことを歌っていきます。
彼らが去ると、再び魔女たちが現れ、マクベスがまた自分たちのもとに、予言を聞きに来るだろうと、はしゃいで歌います。



場面変わって、マクベスの城の広間
マクベス夫人が登場です。
この方も、ファーストネームは明かされていませんが、強烈な個性を持ったキャラクターです。
心に抱えた野望は、夫以上に大きいものでした。
夫人のもとには、マクベスから、魔女の予言についての手紙が届いていました。夫人は、

「あなたが王になるために、どんな悪事もできるよう、私は勇気を与えましょう。」
ということを、大変魅力的な旋律で歌います。
すると召使いが、王ダンカンがここ、マクベスの城を訪れることを告げると、夫人の野望は油を注がれたように燃え上がり、凄まじいアリアを歌いあげます。

夫人は、王を亡き者にする決意をしたようです。

Image of Lady Macbeth


妻のもとへ帰って来たマクベス。王はもうじき城へ着き、明日の朝には帰るという。夫人は、

「明日、太陽(王ダンカン)を昇らせてはいけません」 

とマクベスに告げ、国王の殺害を暗に示し、マクベスもその意をくんで、決心します。
やがて到着した国王ダンカンを迎えますが、そこに流れる行進曲が、どこか空々しい響きがして恐ろしい感じを与えます。  

ここからのマクベス夫妻の二重唱は、もはやこれまでのオペラの形式を越えた、オペラ演劇とでも言えるようなシーンとなっています。
このシーンが、ヴェルディが本番直前まで初演歌手に練習させたアレです。
短剣を手に持ったマクベスが、躊躇しています。幻も見え始め、乱れてしまった心を歌います。
やがて決心し、王が眠る寝室へ向かうマクベス。

恐ろしい沈黙の後、夫人のもとへ、マクベスが戻ってきました。

「終わったぞ…。」

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そして二人がひそひそと話すように歌います。
ヴェルディは、ここはほとんどすべて、ひそひそした声で喋るように歌って!と指示しました。
夫人は、夫が持っていた血まみれの短剣を手に取って、夫人自ら殺害現場に戻しに行きます。

マクベスが王と一緒に殺した護衛兵にそれを握らせて、罪を着せようというのです。

夫人、怖い人ですねー!夫より肝が据わっています。
1人残ったマクベスは、城の門をたたく音にもビクーッ!と驚き、恐怖にさいなまれます。
戻ってきた夫人は、震える夫を叱咤して、その場を去ります。
その際、彼女の手は血で汚れたのですが、これが、後の夢遊病の場面で伏線となって現れます。


それから間もなく、貴族のマクダフとバンコーが王ダンカンを起こしにやって来ます。
ですが、寝室で殺害された王を二人は発見し、大パニック。

城に居る全員を呼び集め、バンコーが

「王が殺された!」

と叫ぶと、一同、恐怖と絶望、そして神への祈り、暗殺者へ天罰を!という感情を全員で歌う壮大なフィナーレとなります。
そこには素知らぬ顔でマクベス夫妻もいるわけですが、彼らは皆が一斉に歌う暗殺者への呪いの言葉を、周りに調子を合わせるために一緒に歌うので、自分たちに向けて呪いの言葉を放つことにもなるのでした…。
ここで第1幕終了です。


<第2幕>

マクベスの城、とある部屋で。

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予言通り、マクベスは王になることが出来ました。
ですが、魔女の予言の最後、「バンコーが王の親となる」が、マクベスは気になって、暗い面持ちです。
夫人は夫に、バンコーとその息子の暗殺をけしかけます。
マクベスが去って夫人のアリアとなるのですが、現在主に歌われているのはパリ版のために新たに作曲されたものです。
初演版のアリアは、詩の内容も違って、かなり威勢のいい、いわゆるベルカントっぽい歌唱技法に溢れた歌なのですが、パリ版のアリアは、新たな罪への不安も顔をのぞかせる、複雑な感情表現が成されており、より重々しく感じられる曲です。


場面変わって真夜中、城の近くの公園。
黒ずくめの男たちが、ひそひそ話し合っています。
彼らはバンコーとその息子を殺すために集められたのでした。待ち伏せしようと、その場から散らばります。
そこに通りかかったバンコーと息子。

Image of Banco and his son

バンコーは、言い知れぬ不安を覚え、城を去って逃げようとしています。
うすうす、王ダンカンを殺したのはマクベスではないかと疑ってもいるようです。

ここでバンコーのソロが歌われます。

そこに、一斉にとびかかる暗殺者たち!

「逃げろ!息子よ!!」

息子は逃げますが、自らは刃に倒れるバンコーなのでした…。


場面は城の大広間へ。
盛大な祝宴が催されています。

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「マクベス王、ばんざい!王妃ばんざい!」

宴には貴族のマクダフも参加しています。
殺された前の王ダンカンの息子マルコムは、他国へ逃亡しています。  

王妃となったマクベス夫人が、華やかな、乾杯の歌を歌います。
マクベスのもとへ、暗殺者の一人が近づきます。
「貴様、顔が血で汚れているぞ!」

「すみません、バンコーはやりました」

「息子は?」

「逃しました…。」

「おおおい!!」
マクベスは何食わぬ顔で祝宴に戻ろうとしますが、、その時!マクベスの席に誰か座っている。

無礼な!と思って近づくとそこには、、血まみれのバンコーの姿が!バンコーの亡霊がマクベスには見えてしまったのです!

「うわああああ、やめろ!俺がやったなどと言うな!」  

驚く一同。

夫人が必死になだめます。

「あなた何言ってるの!男でしょ!!」

マクベス、いったんは落ち着きを取り戻しました。
再び夫人が乾杯の歌を歌うのですが、マクベスはまたもやバンコーの亡霊を見て、取り乱します。

「去れ!! やめろ!!俺は勇敢だぞ!来るなら来い!!だめだ!立ち去れ!!恐ろしき亡霊が!!うわああああ!!」

……。

やっと亡霊は姿を消しましたが、周りの人々は、取り乱す王マクベスの姿を見て、呆然と立ち尽くしています…。
当然、マクベスの罪も、察知したことでしょう。
マクダフも、この地を離れることを決意します。

また魔女のもとへ行って予言を聞かねば、と思うマクベス。心に不安がよぎる夫人。

それぞれの暗い気持ちを見事なアンサンブルで歌うフィナーレとなり、第2幕が終了します。


<第3幕>

ここは魔女たちの住む洞窟。
第1幕冒頭と同じように魔女たちが話しています。やはり悪魔的で面白い音楽です。

ここにパリ版でバレエ音楽が加えられました。現在の上演でカットされることもあるのですが、ちゃんと演奏されれば、ひっじょーーにかっこいい音楽です。
さてそんなバレエ音楽の後、マクベスが1人で洞窟に現れます。

「俺の運命を教えてくれ。」  

すると魔女たちは、儀式を行い、亡霊たちを呼び寄せます。彼らの声が聞こえます。

「マクベス、マクダフには気をつけろ」

「おお、やはりそうか!それで?」

「黙ってお聞き!」

「マクベス、お前は女から生まれた者には危害を加えられることはない」

「なら俺は誰にも負けないじゃないか!女から生まれてないやつなどいない。マクダフも許してやろうか。いや!許さん!やはりあいつにも死を!」

「マクベス、バーナムの森が動かぬ限り、お前は無敵だ」

「森が動くわけないだろ!よし、俺は無敵だ!」

しかし、マクベスにはまだ気がかりなことがありました。
「バンコーの子孫が、俺の王座に就くのか!?」  

すると、バグパイプの音と共に、何人もの王たちの幻影が通り過ぎていき、最後に鏡を持ったバンコーの姿が現れます。ということは、やはり予言通りバンコーの子孫が王になるということのようです。
ひとしきり、その恐怖を歌うマクベスのソロの後、彼は気絶してしまいます。
魔女たちがマクベスの周りを踊りながら歌う幻想的な曲が流れます。
その後、初演版では、気絶から目を覚ましたマクベスのアリア。

パリ版では、目を覚ましたマクベスのもとに夫人が駆けつけて、マクダフを攻め滅ぼそうと二人で決意する短い二重唱で第3幕が終わります。


<第4幕>

スコットランドとイングランドの国境辺りの地で。
近くにバーナムの森が見えます。

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戦争によって難民となった人々が、崩壊した祖国を悲しんで歌う合唱なのですが、ここも初演版とパリ版では全く違う音楽です。
初演版は、「ナブッコ」( https://tenore.onesize.jp/archives/86 ) の”行け、想いよ、黄金の翼にのって”に似た、ストレートな愛国路線と言える歌です。
対してパリ版は、よりドラマティックに、繊細に歌わなくてはならない、歌う方は難しい、聴く方には大きな感動を与える音楽となっています。
ちなみにこのシーンは、シェイクスピアの原作にはない、ピア―ヴェのオリジナルです。
そこに、マクダフが現れます。彼は、自分の城がマクベスに襲われ、妻や子供たちが殺されたという報せを受けました。

Image of Macduff

ここでテノールマクダフのアリアが歌われます。多くのテノールに歌われてきた名曲です。
マクダフはなぜ自分の城を守れなかったかと言うと、原作で、イングランドに亡命していた、前の王ダンカンの息子マルコムに、マクベスを討つために立ち上がるよう説得しに行っていたからでした。

オペラではその原作の場面が描かれないため、何をしていたんだマクダフ、と思ってしまいますが、そういった事情がありました。
そこへ、王子マルコムがイングランドからの援軍を含めた軍勢を連れて颯爽と登場。マクダフを励まして、マクベスを攻めようと、非常にかっこよい音楽でみんなも盛り上がります。
当時の聴衆が一番盛り上がったのも、この場面でした。
この際、マルコムは皆に、バーナムの森の木の枝を取って、身をひそめるよう指示します。


場面は変わって、マクベスの城。
夜です。
医者と侍女がひそひそと話し合っています。
夫人はとうとう精神を病んでしまい、夜ごとに夢遊病状態で、城の中をさまようようになっていました。
夫人が現れ、しきりに手をこすっています。第1幕で、血に汚れた手を洗おうとしているのですが、

「なかなか汚れが落ちないわ…」

とつぶやいています。

そして、王ダンカンやバンコーを殺したことも口にして、医者と侍女は震えあがります。  

そうして夫人は、再び寝室に戻っていくのでした。  

この夢遊病シーン、初演から変わらずある、非常に印象深いものになっています。歌唱力以上に演技力が、夫人を演じる歌手に求められる場面です。

城にあるマクベスの部屋で
マルコムとマクダフが軍勢を率いて攻めてくることを知り、マクベスは激怒しています。
そして、孤独な人生の悲哀を歌います。かなり美しいメロディで、とても暴君マクベスの歌とは思えませんが、彼とて、もとは普通の人間だったということでしょうか。

Image of Macbeth


そこに、夫人が息を引き取ったとの知らせ。精神だけでなく、不眠による体力の衰弱もあったのでしょう。
さらに、部下たちが驚きの知らせを持ってきます。

「バーナムの森が動いています!」

「何だと!!!」
魔女たちの予言では、バーナムの森が動かない限り負けることはないとのことだった…。

これは先ほど、マルコムが枝を取って進め、と指示したことによって、森全体がわさわさ動いているように見えたということですね。
「ええい!こうなれば待つのは、死か勝利かだ!!いくぞ!!!」

「おおおおお!!」  

ということで、バトルミュージックに入ります。初演版はかっこいいロールプレイングゲーム的音楽、パリ版は、いかにも叙事詩といった感じのこれまたかっこいい音楽が流れます。

やがてマクダフとマクベスの一騎打ち。
予言では、マクベスは「女から生まれた者には負けない」とのことでしたが、マクダフは、

「俺は母の腹を破って出てきたのだ!」

と言い、マクベスを倒します。
これはつまり、マクダフは帝王切開で誕生した、ということなのですね。
ここからフィナーレへの流れも、初演版とパリ版で大きく異なります。
初演版は、マクダフに負けたマクベスが、皆の前で瀕死の状態で短いソロを歌って、息絶え、新王マルコム万歳!と一瞬だけ盛り上がって終わります。
パリ版は、一騎打ちは舞台裏に持ち越されて、マクベスはひっそりと死に、勝利したマクダフとマルコム、群衆による凱旋的なフィナーレとなって華々しく終わります。
初演版は、マクベスを主人公とするなら、むしろそちらの方がしっくりくるかもしれません。
パリ版は、これでオペラ終わりです!とわかりやすいフィナーレの音楽となっています。
皆さんはどちらがお好みでしょう?

Image of Macduff and Malcolm


以上でオペラ「マクベス」全体の幕が下ります。


いかがでしたでしょうか?

いやー、大名作なだけに、長くなってしまいましたねー。
でもほんっっとうに面白い、素晴らしい作品です。ぜひ多くの皆さんに聴いていただきたいと思います。
早速「オペラ マクベス」で検索してみてください!
 

ありがとうございました。

髙梨英次郎でした。


参考文献(敬称略)

小畑恒夫「ヴェルディ 人と作品シリーズ」

ジュゼッペ・タロッツィ「評伝 ヴェルディ」小畑恒夫・訳

永竹由幸「ヴェルディのオペラ」

髙崎保男「ヴェルディ 全オペラ解説」

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