オペラ解説:ヴェルディ「群盗」成立から、あらすじまで

当サイトではGoogle AdSense広告を表示しています

オペラ解説配信の文字起こしです。

聴きながら読むと分かりやすい!音声はこちら↓

オペラ「群盗」解説 – テノール歌手:髙梨英次郎のトークです | stand.fm
ヴェルディ11作目のオペラ「群盗」を解説しました。 ロンドンで初演された意欲作! 0.00〜 概要 1.18〜 作曲の経緯 5.56〜 内容、第1幕 12.18〜 第2幕 14.44〜 第3幕 18.29〜 第4幕 21.49〜 まとめ 文…

こんにちは!テノール歌手の髙梨英次郎です。
本日もオペラをざっくり解説して参ります。
オペラって面白いですよ!

さて今回は、ヴェルディ11作目のオペラ「群盗 I Masnadieri」です。
ロンドンで初演されることになったこの作品。初めてのイタリア国外での新作発表です。
今ではあまり上演されませんが、ヴェルディのイタリアオペラの典型として、音楽的には他と全く引けを取らない、名作です。


作曲、初演までのヴェルディ

まずは作曲の経緯についてお話します。

前作「マクベス」( https://tenore.onesize.jp/archives/93 ) の初演前、ヴェルディは体調不良を癒すため温泉地で休息をとったのですが、その際、詩人で友達のマッフェイと温泉地で時間を共にしました。
マッフェイはヴェルディに、「マクベス」ともう一つ、シラー作「群盗」のオペラ化を薦めたとみられています。
この時期、ロンドンの国立歌劇場から依頼が来ていたので、シェイクスピアの国、英国ロンドンで「マクベス」を上演できれば本当は良かったのですが、、その時フィレンツェの劇場からも依頼が来ていて、フィレンツェでは「群盗」に必要な歌手が揃えられないので、フィレンツェで「マクベス」を、ロンドンで「群盗」を上演することになったのでした。
「マクベス」では、一部で台本を書いたマッフェイが、「群盗」では1作丸ごと書くことになりました。  

Andrea Maffei

「群盗」は、ドイツの作家シラー(第九の歌詞でもおなじみ)22歳の時、初めて書いて発表した戯曲です。

Schiller

(シラーの作品が)ヴェルディによってオペラ化されるのは7作目の「ジョヴァンナ・ダルコ」( https://tenore.onesize.jp/archives/90 ) 以来2作目ですね。
マッフェイは、ヴェルディがともに仕事をしてきたピア―ヴェやソレーラのように、オペラ台本を書くことには慣れておらず、プロの台本作家としてのキャリアはなかったので、オペラが出来上がるには少々時間がかかってしまいました。

ヴェルディとしても物理的な時間が足りず、作曲には困難が伴いました。
何とかロンドンのシーズン終了直前に初演が叶います。
1847年7月22日、ロンドンのハー・マジェスティーズ劇場(国立劇場)、ヴェルディ33歳。
イギリスでもその名がとどろいていたヴェルディが、ロンドンで新作を発表するとあって、その期待と注目はもの凄かったようです。
初演の会場にはヴィクトリア女王や、フランスから来ていたルイ・ナポレオン(後のナポレオン3世)など、名だたるVIPが出席していました。
初演は、歌手が良かったこともあって、大いに成功を収めました。  

当時のイタリアでは、オペラの際、今のように指揮者が真ん中で棒を振るということはあまりなく、コンサートマスターの第1ヴァイオリニストがリズムやきっかけを示すだけでした。

オペラの新作を発表する作曲家はオーケストラピットの端っこに座って、拍手が来たらそれに応える、という形がイタリアでは一般的でした。
ですが英国ではそうでなく、今のように指揮者がいることは一般的になっていて、しかも初演の場合はその作曲家が振るのが習慣でした。
ヴェルディはそうとうイヤだったみたいですが、渋々初演を指揮したようです。
ただ。ロンドンの肌寒く湿っぽい気候、当時の石炭の煙が街を覆っている感じが、ヴェルディには全くお気に召さないものであったようです。
早々にロンドンを出たヴェルディが向かった先はフランスのパリ。パリで、彼は生涯を共にするある女性と、関係を深めていくことになります。
その続きは次回作の時に!


オペラの概要

それではオペラ「群盗」の内容に移って参ります。

「群盗」
全4幕
 時は18世紀初頭
<登場人物>
マッシミリアーノ:ドイツ中南部、真ん中あたり、のフランケン地方の領主、モール伯爵とも呼ばれる
カルロ:マッシミリアーノの長男
フランチェスコ:マッシミリアーノの次男
アマ―リア:孤児だったが伯爵に姪として引き取られた、カルロの妻
ほか数名
オペラはチェロの独奏が主体となった、悲し気な前奏曲で幕を開けます。


第1幕

領主で伯爵のマッシミリアーノには、二人の息子がいました。

長男のカルロは、頭も良くイケメンで、父親からも愛されていました。
次男のフランチェスコはそんな兄へのコンプレックスからか、性格もひねくれてしまい、父親からもあまり愛されず、自分が領主になって、いつか父と兄を見返してやろうと思っていました。

当時の習慣から言えば、当然領主の座は長男のカルロに譲られるところだったのですが、カルロは理想主義に燃えてしまうところがあり、大学生の時に、その時代の封建主義的な社会に反発して、家出して、アマ―リアという女性と婚約していたのですが彼女のことも捨てて、いわゆる不良グループの仲間に入ってしまいました。
そんなカルロでしたが、オペラの幕が上がった時には、いくらか反省して、父に許しを請おうと手紙を送っていました。
婚約者のアマ―リアのことも気にかかります。そんな気持ちを歌うアリアから、オペラは始まります。

Image of Carlo

そこへ仲間たちが、実家からの手紙を持ってきます。
差出人は弟のフランチェスコ。
そこには、

「帰ってこない方がいい。父さんは兄さんを許さず、牢獄に入れるつもりだ」
と書かれていました。カルロは動揺します。
最早やけっぱちのカルロは、仲間たちとギャング団、つまり群盗を結成して、そのリーダーになることを誓います。
相当こじれてしまいましたね!
ここまでテノールのアリアの場面です。


場面変わって、フランケン地方モール伯爵のお城の一室で
次男のフランチェスコが、1人、よからぬことを企んでいます。
彼は、兄カルロが父親マッシミリアーノに宛てた手紙を、勝手に書き換えて、反省なんかしてませんみたいに書いたのですね。

それで父親を怒らせたうえで、カルロにもにせの手紙を送っていました。

さっきの手紙は嘘だったのです。

フランチェスコはひねくれてしまったあまり、兄にも父にも復讐しようとしているのです。
よほど愛情を受けずに育ってしまったのでしょうか…。

父である伯爵に、兄カルロは戦争に参加して戦死しました、と、嘘の報告をしようとしています。
わざわざアルミーニオという家来を、外から来た使者に変装させて、嘘の報告に真実味を持たせようとしています。変装させないと、父伯爵に、城にいる家来アルミーニオじゃないか、とバレてしまいますからね。
ここまで、次男フランチェスコの野望のアリアといった場面です。

Image of Francesco

城の別の部屋では、カルロの婚約者アマ―リアが、年老いた伯爵、おじでもあり義理の父でもあるマッシミリアーノが眠っているのを優しく見守っていました。
自分を捨てたカルロとの思い出がよみがえって、アマ―リアはソロを歌います。

Image of Amalia

やがて目を覚ました伯爵。心身ともに衰弱して、命の灯が今にも消えてしまいそうです。

そこへ、次男フランチェスコが、使者に変装した家来アルミーニオと共に登場。
カルロが戦死した、と嘘の報告をします。
しかも、フランチェスコはカルロの遺品であるという剣をアマ―リアに渡します。
そこには、「自分の死後は、アマ―リアはフランチェスコと結婚するように」ということが、血で書かれていました。
フランチェスコはこんな小道具まで用意して、アマ―リアも横取りしようというわけですね。
絶望する伯爵父さん、半狂乱のアマ―リア、ほくそ笑むフランチェスコ、後悔するアルミーニオの四重唱です。
気を失った伯爵を見て、皆は伯爵が息絶えたと思いました。

ここで第1幕が終了します。


第2幕

第1幕からしばらくたった後
次男フランチェスコはまんまと新領主に就任し、お城では亡くなった父親の追悼にかこつけた盛大な宴を開いています。

アマーリアはその偽善的な祝宴から抜け出してきて、伯爵の墓の前で悲しみを歌います。
マッシミリアーノ伯爵は、ショックで亡くなってしまったのでしょうか。

Image

そこへ家来アルミーニオが駆け込んできます。

「お許しください!」
「どうしたの?」
「カルロさまは…生きておられます!」
「何ですって!」
「そして、、あなたの叔父様も…」

と言うや否や、アルミーニオは去ってしまいます。やはり良心の呵責に耐え切れなくなったようです。
カルロが生きている!ということに喜びを歌うアマ―リア。
それにしても、マッシミリアーノも生きてるとはどういうことでしょう?

ではこのお墓は何なのでしょう??
そこに悪の次男、フランチェスコ登場。

「なぜ祝宴から逃げたのだ?」

などと言ってアマ―リアをなじるフランチェスコとアマ―リアの二重唱です。
アマ―リアは彼にいったん抱き着くふりをして、その腰から短剣を抜き取り、自らの身を守ってその場から逃げ去ります。


続いての場面は、プラハの街が見えるボヘミアの森

Image

ここで、カルロのギャング仲間が捕らわれていましたが、カルロに助けられ、無事に戻ってきました。
仲間と現れたカルロ。
1人になって、犯罪集団のリーダーと言う自分の立場に苦悩しつつ、アマ―リアへの消えない思いを歌います。

その時、仲間が駆け込んできて、自分たちが森で軍隊に囲まれているとの知らせ。
よし武器を取って、戦おう!とその場を走り去ります。
この場面、合唱が活躍するかっこいい音楽です。
以上で第2幕が終了です。


第3幕

伯爵の城に近い森のそばの廃墟辺りで

Image

アマ―リアは、何とかここまで逃げてきました。
「ここはどこ?何か、盗賊たちの声みたいなのも聞こえてきて、、ああ、怖い…。」
そこに1人の男が現れます!

「ああ!もうだめ!」
「アマ―リア!」
「なんで私の名前?あなた誰??」
「僕だよ!見て!」
「誰??日焼けしててわからない…」
「カルロだよ!」
「カルロ!!??」
久しぶりの再会に抱きしめ合う二人。
アマ―リアはこれまでのいきさつをカルロに話します。  

「フランチェスコ、あの悪党め!」
となるのですが、カルロは自分が群盗のリーダーだとは、アマ―リアに言えないでいます。


場面は森の中に変わります。夜です。
盗賊たちの陽気で勇壮な合唱曲が歌われます。
リーダーであるカルロがみんなのもとに現れて、

「みんなもう寝てくれ。俺は起きてるから」
で、1人物思いにふけります。  

カルロは、今の状況に絶望しています。彼は本当は賢くて育ちもいいので、こんな犯罪者集団と行動を共にするのは本意ではないのです。
持っていたピストルを見つめて、自殺を考えますが、思いとどまります。悩める青年といった感じですね。
その時、伯爵家の家来アルミーニオが、古い塔が近くにあるのですが、その辺りにやってきます。
陰からその様子を見るカルロ。
アルミーニオは中に居る誰かに、夕食を運んできたようです。  

そこへ飛び出すカルロ!
「そこにいるのは誰なんだ!」
「カルロ坊ちゃま!いけません!」  

驚いたアルミーニオは、中に誰がいるか見ようとするカルロを止めようとしますが、やがて逃げ出します!
そこにいたのは、骸骨のようにやせ衰えた父親、マッシミリアーノでした…!
「父さん!!」
「カルロか…!」
墓に埋葬されたはずのマッシミリアーノが、なぜここにいるのか。

それは、次男フランチェスコが、第1幕で兄カルロが死んだと伝えて失神した父親を、無理矢理に棺へ押し込めて、表向き亡くなったことにして、自分が領主となり、父親をこの古い塔へ幽閉していたのでした。
ひどいですねー。
そのことを語り終えた父マッシミリアーノは再び気絶。
怒ったカルロは、叫びまわって仲間を叩き起こします。
「どうしたどうした?」
「あの死にかけた老人を見てくれ、あれは俺の親父だ!復讐するぞ!!」

「おおお!!」
となって、第3幕が終わります。  

ヴェルディが、この作品にはいいテノールが必要だと思っただけあって、非常にかっこよく、かつ、弟への復讐ということで、どこか悲壮感もある名場面です。


第4幕

城の中の一室。
フランチェスコが悪夢にうなされています。
さすがに、やってきたことが極悪すぎて、良心がとがめているようです。
フランチェスコは家来のアルミーニオに、悪夢の内容を語って歌います。
フランチェスコは司祭を呼んで、慰めを得ようとしますが、この司祭も、フランチェスコを父殺し兄殺しの罰当たり!と非難するので、フランチェスコは怒ってしまいます。
そこにアルミーニオが飛び込んできて、城が群盗たちに襲われていることを報告します。
半ば死を覚悟するフランチェスコでした。


場面変わって、第3幕の最後の方と同じ森で
父マッシミリアーノとカルロが居ます。
マッシミリアーノ、カルロのことを息子だと認識できていないようです。
悲しい二重唱が終わると、群盗の仲間たちがやって来ます。城を攻めたがフランチェスコは見当たらなかった。逃げたのでしょう。(原作ではフランチェスコにあたるフランツは自死)

代わりに、群盗たちが森の中で捕らえたアマーリアを連れてきます。

第3幕で感動の再会をしたはずの二人ですが、カルロや群盗たちが出撃してから彼女はアジトに取り残され、気づくと周りには群盗の怪しい連中。アマ―リアは不安になり、そこから逃げ出して森を彷徨っていたようです。

その途中、運悪く(あるいは運命のいたずらで)カルロの部下たちに見つかって連れてこられたのでした。

アマ―リアはカルロを発見して喜びます。
しかも、墓に埋葬されたはずの伯爵もいる。
しかしカルロはついに告白します。

「俺は群盗の首領リーダーになったのだ!」

仲間は

「言わなきゃいいのに!」  

なんて言いますが、カルロはそのまま自首して、死刑にでもなんでもしろ!と言います。
ところがアマ―リアは、

「あなたから離れるなら、死んだほうがまし!」  

と言って、天使のように愛を語ります。
カルロは、いったんはその愛にこたえて、二人で愛に生きようとします。
しかし、仲間たちは首領が組織を抜けることをよしとしません。
「俺たちに誓ったじゃないか!俺たちを裏切るのか?」
カルロがとった行動は、、、アマ―リアに、短剣を突き立てることでした!
いっそ死にたいというなら、俺があの世へ送ってやろう、、ということなのでしょうか・・・。


驚く一同にカルロは言い放ちます。  

「さあ、俺を絞首台に!」

彼女を殺して、俺も死ぬ、、という悲劇。。
崩れ落ち、息絶えるアマ―リアでした…。
…これでオペラ全体の幕が下ります。


まとめ

いかがでしたでしょうか?

いやー、”ロマン主義”ですね!
何といいますか、愛してる!でもこんな世の中では愛が叶わない!ならいっそ2人で死のう!
と言う流れが一般的なのが、ロマン主義というか、ロマン的というか…。
こういうお話が、当時のヨーロッパでは大うけだったわけです。
ヴェルディのお友達マッフェイさん、色々な文章を書いてきて、オペラを書くのも自信があったのかもしれませんが、やはりオペラ台本を書くというのは、それなりに特別な技術が必要で、ちょっと物語における場面のチョイスや繋がりに難があり、なかなか説明しづらい個所もありましたが、いつものようにヴェルディの音楽は素晴らしく、歌手がそろった録音や上演なら十分、楽しめます。
皆さんも今すぐ、「オペラ 群盗」で検索してください。


ありがとうございました。

髙梨英次郎でした。


参考文献(敬称略)

小畑恒夫「ヴェルディ 人と作品シリーズ」

ジュゼッペ・タロッツィ「評伝 ヴェルディ」小畑恒夫・訳

永竹由幸「ヴェルディのオペラ」

髙崎保男「ヴェルディ 全オペラ解説」

コメント

タイトルとURLをコピーしました