オペラ全曲ざっくり解説の文字起こしです。
聴きながら読むと分かりやすい! 音声はこちら↓

こんにちは!テノール歌手の髙梨英次郎です。
本日もオペラをざっくり解説して参ります。
オペラって面白いですよ!
今回は、ヴェルディ24作目のオペラ「運命の力 La Forza del Destino」を取り上げます。
それではここから、内容とストーリーをご紹介します。

「運命の力 La Forza del Destino」
全4幕
ときは18世紀半ば
登場人物
ドン・アルヴァ―ロ:騎士。スペイン人総督の父とインカ帝国末裔の母との間に生まれた混血児。
カラトラーヴァ侯爵:セビリアの貴族
レオノーラ:カラトラーヴァ侯爵の娘
ドン・カルロ:カラトラーヴァ侯爵の息子、レオノーラの兄
プレツィオジッラ:若いジプシー娘
グァルディアーノ神父:修道院長
メリトーネ:修道士
オペラは長めの序曲で始まります。
こうした長めの序曲は、この作品がヴェルディ最後のものになります。
この序曲は1869年改訂版のために作曲されました。
オペラの名シーン、名音楽が紡がれたもので、これだけで演奏会に取り上げられることも多く、大変な名曲です。
まさに”運命の力”を感じさせるこの序曲、まずはぜひ聴いてみてください。
<第1幕>
スペインのセビリアにあるカラトラーヴァ侯爵の邸内。家の中
侯爵が娘のレオノーラの部屋で、おやすみの挨拶をしています。
なぜかレオノーラは浮かない顔。
レオノーラは、騎士のドン・アルヴァ―ロと恋仲になっていました。
アルヴァ―ロは、スペイン人総督の父とインカ帝国の末裔の母との間に生まれた混血児、いわゆるハーフ、今だとミックスと言った方がいいでしょうか、そういった人物でした。
そうしたアルヴァ―ロの生まれをよく思わないカラトラーヴァ侯爵は、娘の相手としてふさわしくない、と2人の結婚に断固反対していたのです。
思い余ったレオノーラは、アルヴァ―ロと駆け落ちの約束をしていて、今夜がその駆け落ち実行の日なのでした。

ところがレオノーラはここに来て迷いが生じています。
「お父様のお言葉が私の心に刺さってしまった…。」
侍女のクルラは、駆け落ちに協力的で、と言うのも、オペラでは描かれないのですが、原作ではこの侍女クルラも、アルヴァ―ロの従者と恋に落ちていて、共に駆け落ちすることになっていたのです。
クルラに「アルヴァ―ロ様のことを愛してらっしゃらないのですか」
と問われレオノーラは、
「とんでもない!アルヴァ―ロを愛するがゆえに故郷も家族をも捨てていくのよ」
というソロを歌います。
そこに、窓の外から馬が走ってきた音がして、ドン・アルヴァ―ロが颯爽と登場します。
さあ行こう!と思ったら、レオノーラがためらっているので、アルヴァ―ロは情熱的にレオノーラを説得します。
しかし彼女は、
「出発は明日にしましょう…。もう一度お父様にお会いしたいのです…。」
なんて言うので、アルヴァ―ロは
「ああもうはい、わかりましたお嬢様、あなたは私ほどには私のことを愛していないのですね。私だけが苦しめばいいんですね」
「そんな!…わかりました、私はあなたのもの、あなたに一生ついていきます!」
「レオノーラ!」
さあ2人でどこまでも行こう!と、バルコニーに向かいます。
しかしそこへ!
カラトラーヴァ侯爵が家来たちを連れて行く手を阻みます!
怒り狂う侯爵。
アルヴァ―ロは死を覚悟して、持っていたピストルを投げ捨てます。
しかし、ここで恐ろしい”運命の力”がはたらいてしまいます。
投げ捨てた衝撃でピストルが暴発して、なんとそれが侯爵に命中。
それが致命傷となってしまったのです。
侯爵は死にゆく直前、我が娘とアルヴァ―ロに呪いの言葉を投げつけます。
混乱の中、気を失いつつあるレオノーラを抱えて、アルヴァ―ロは従者たちに助けられながらその場を逃げ去ります。
ここで、第1幕が終了します。
<第2幕>
・第1場
第1幕から約1年半後。
南スペインの村にある宿屋1階の食堂で。
人々が酒や食事を楽しんだり、踊ったりしています。
食堂の客の一人として、1人の男が紛れ込んでいました。
それは、亡くなったカラトラーヴァ侯爵の長男、ドン・カルロでした。

カルロは学生に変装してこの村にやって来て、父の仇である妹レオノーラとその恋人アルヴァ―ロに復讐しようと、彼らを探していたのでした。
そこに、男性の服に身を包んだレオノーラの姿が現れます。
彼女はアルヴァ―ロと共に逃げたのもつかの間、混乱の中アルヴァ―ロとはぐれてしまい、その後は彼女の伯母のもとへ身を隠していました。
しかし、兄のドン・カルロが父の復讐にと、妹の命をも狙っているという噂があり、伯母のもとを去って、近くにある修道院に入ろうと、この村を訪ねてきたのでした。
食堂で兄に気づいたレオノーラは驚き、目立たないようにその場で身を潜めます。
そこに、若いジプシー娘プレツィオジッラが現れ注目を集めます。
プレツィオジッラは、
「イタリアでドイツ相手の戦争が始まっている、金儲けしたいならそこへ行って兵隊になるといいよ!戦争万歳!」
と皆に勧めるソロを歌います。
皆は、よし行こう!と意気込んで承知します。
そこへカルロが近づき、
「俺の手相を見てくれないか?」と頼みます。
プレツィオジッラは、
「悲惨な運勢だね。あんた学生じゃないんだろ?ま、ここでは何も言わないよ」と、はぐらかします。
外からキリスト教の巡礼者たちが歩いている声がするので、そこにいる一同は祈り、またレオノーラも、兄から無事に逃げられることを神に祈ります。
祈りが済むとカルロは、男装したレオノーラを連れてきた行商人のトラブーコに、連れてきた人物について問いただします。
しかし明瞭な答えは得られず、カルロは逆に村長から素性を問われるので、語り出すソロを歌います。
自分の本名は隠すカルロですが、やがて友人の話として、
「そいつの妹の異国人の恋人がそいつの父親を殺したのです。」と、ある程度事実も話します。
プレツィオジッラだけは、カルロが本当の素性を語っていないことを見破っています。
もう遅い時間なので、その場はお開き、といった感じでこの場面が終わります。
・第2場
岩山にある聖母教会の修道院入口
男装したままのレオノーラが現れます。
兄カルロがやって来た食堂付きの宿屋から抜け出して、なんとかここにたどり着いたのでした。
先ほどのカルロが語ったところによると、はぐれてしまった恋人アルヴァ―ロは西へ向かったらしい。
死んではいなかった!
でも自分は見捨てられた。耐えられない苦しみ!
そしてレオノーラは聖母マリアへ祈りを捧げる、大変ドラマティックで素晴らしいアリアを歌います。
修道院の呼び鈴を鳴らすと、最初に修道士メリトーネが応対して、やがて中からグアルディアーノ神父が出てきます。

グアルディアーノは、いかにも聖職者と言った感じの、重々しい雰囲気をまとった人物です。
レオノーラはグアルディアーノ神父に素性を、自分が女性であることを明かします。
レオノーラは男装していたので、ぱっと見は男性に見えていたのですね。
仏教のお寺でもそうですが、男性しかいない修道院では女子禁制、女性しかいないところでは男子禁制ですので、このような人里離れた修道院、それも男性しかいないところに女性が1人でやって来ること、それ自体がまず衝撃的なことなのです。
レオノーラが以前頼っていたところにいた、カトリックの司祭が、グアルディアーノ神父に手紙を送っていたので、神父は目の前の男装した女性が、不幸な亡くなり方をしたカラトラーヴァ侯爵の娘レオノーラであることを知って、また驚きます。
レオノーラは、世間では愛人と共に父親を殺した悪女として噂されていたので、彼女はもう誰にも会わず、一人でキリスト教の信仰と共にひっそり生きて行こうと決意していました。
そのため、この岩山の奥にある洞窟に庵、質素な小屋があるのですが、そこで1人、世を捨てた隠者として暮らしていきたい、とグアルディアーノ神父に頼みます。
グアルディアーノは、それを承知して、7日ごとに粗末な食事を神父自ら、その洞窟へ運ぶことを約束します。
そして修道士を全員集めて、改めて男装したレオノーラに祝福を与える儀式を行います。
周りの修道士は、レオノーラが女性であるとは気づいていません。
ここの音楽は、ヴェルディが後に作曲する「レクイエム」( https://tenore.onesize.jp/archives/124 ) を思わせる、壮大なキリスト教音楽となっています。
特に後半の ”天の使いたる乙女よ La Vergine degl’angeli” は、言葉にならない美しさです。
こうして第2幕が終わります。
<第3幕>
・第1場
第2幕から数年後。2,3年くらいでしょうか。
場所は北イタリアで、ドイツ軍と戦っているスペイン軍の陣営内。
ドン・アルヴァ―ロが、1人、たたずんでいます。
アルヴァ―ロは、レオノーラがもうこの世にいないものと思っていました。
人生に絶望し、自らの生まれを語り出します。

そして、天国にいる(と思っている)レオノーラに、救いを求める、そのような素晴らしいアリアを歌います。
自殺が許されないキリスト教社会ですので、アルヴァ―ロとしては、戦争に参加して戦うことでいずれ誰かが殺してくれるだろうと思っていたのですが、アルヴァ―ロはどうも腕も運も強い男なようで、なかなか死ねないでいます。
すると、奥から争う叫び声がして、1人の男がそこから逃げてきます。
オペラを観ている聴衆はそれが誰だか知っています。
なんとそれは、殺された侯爵の長男ドン・カルロ。
アルヴァ―ロとカルロは、お互いの顔を知りません。
カルロは、昨日、この軍に着任したばかりだったのですが、軍隊の何人かと賭け事に興じていた際、いさかいが起きてしまったのでした。
アルヴァ―ロはカルロを救ってやります。
カルロは、
「いやぁ助かった、君は命の恩人だ!」
と感謝を表して、お互いに偽名を名乗り合い、友情が交わされます。
やがてラッパが鳴り、戦闘が再開されるので、2人は戦いへと走っていきます。
戦いを描写する短い音楽が演奏されます。
スペイン・イタリア側の勝利となりますが、戦いで活躍したアルヴァ―ロが瀕死の重傷を負って、担架で運ばれてきます。
いまや戦友となったカルロは、アルヴァ―ロを心配して介抱します。
目を覚ましたアルヴァ―ロは
「このまま死なせてくれ」
と頼みますが、カルロは聞き入れず、
「君を救ってみせる。活躍した君は、カラトラーヴァ勲章をもらえるだろう」
と言います。かつての侯爵の名前で、今で言う”誰それ名誉賞”のようなものがあったのですね。
しかしアルヴァ―ロは
「カラトラーヴァ!?だめだ!絶対に!」
と、過剰に反応します。
ふと、カルロはその反応に疑念を抱きます。
アルヴァ―ロはカルロに、
「そこにある箱には、決して知られてはいけない秘密が入っている。俺が死んだら、この鍵で箱を開けて、中にある包み(巻いてある紙、手紙?)を焼いてくれ」
と頼みます。
死に瀕しての戦友の頼みを受け入れるカルロ。
そしてアルヴァ―ロは医務室へと運ばれていきます。
カルロは一人、考え込みます。
「カラトラーヴァという言葉に対するあの反応…、我が一家の不名誉な事件を知っているのか?…もしやあいつが妹を誘惑した男では?」
思いあぐねた結果、カルロは箱を開けて、中にあった包みを取り出し、また、箱の中にあった別のものを発見します。これについては、奴は何も頼んでいない、なのでその物を取り出すと、それは、妹レオノーラの肖像でした!
「間違いない!あいつがドン・アルヴァ―ロだったのだ!!」
そこに、アルヴァ―ロが一命をとりとめた、との知らせが来ます。
「助かったと?何という喜び!
アルヴァ―ロにこの手で復讐が出来る!
レオノーラ、お前はどこに隠れている?
お前たちは俺が必ず地獄のもとに送ってやる!」
と、カルロは自分の手で復讐を果たすことを誓います。
カルロの劇的なアリアが歌われます。
・第2場
先ほどと同じ戦場での夜の場面に変わります。
傷がいえたアルヴァ―ロに、カルロが近づいて、決闘を挑みます。
アルヴァ―ロは、戦友と思っていた相手が侯爵の長男カルロだとわかり驚きます。
そして、
「レオノーラとは純粋な愛で想い合っているだけで、汚らわしいことはしなかった」
と弁明します。
アルヴァ―ロはレオノーラが死んだと思っていて、カルロにもそのように話したのですが、カルロは彼女が生きているらしいことを告げます。
「彼女が生きている!」
喜ぶアルヴァ―ロ。
しかしカルロは、「お前もレオノーラも俺が殺してやる」
と言うので、アルヴァ―ロは仕方なく決闘に応じます。
しかしその決闘は周りの人々に止められ、2人は引き離されます。
アルヴァ―ロは、自分の生きる場所はもう修道院にしかない、と、俗世、世の中を捨てて生きることを決意して、剣を捨て、その場を去ります。
非常にかっこいい場面なのですが、この後第4幕にも決闘の場面、音楽があり、重複してしまうということでカットされることも多いシーンです。
やがて陽が昇って、兵士たちや商人たちが集まってきます。
悲劇の主人公たちはいったんお休みして、ここから喜劇的な場面が繰り広げられます。
ジプシー娘プレツィオジッラが現れて、みんなを占ってあげるよ!と、場を盛り上げます。

続いて、行商人トラブーコがモノを売ったり買ったりしています。
今で言うリサイクルショップのようなもので、ある兵士からいらないものを安く買って、他の人に高く売ろう、というわけです。
今度は、まだ10代そこそこの若い兵士たちが故郷に帰りたい、と泣いています。
そんな彼らをプレツィオジッラが慰めます。
そして陽気なタランテッラというダンスを踊る人々。
そこに、修道士メリトーネが現れて、この騒ぎにあきれています。
メリトーネは、レオノーラが駆け込んだ修道院にいた修道士ですが、従軍僧、戦争についてくるお坊さん、のような感じで戦地に赴いていたのでした。
うるさく説教するメリトーネにイタリアの兵士たちはうんざりして、メリトーネに殴り掛かります。
スペイン兵やプレツィオジッラがメリトーネを逃がしてやり、プレツィオジッラは「ラタプラン!」と太鼓の音をまねた歌を陽気に歌って、この場面、そして第3幕が終了します。
<第4幕>
・第1場
第3幕からは少なくとも5年以上の月日が流れました。
舞台は再びスペインです。
第2幕で出てきた岩山の修道院。
修道士メリトーネが、大勢いる貧しい人達に食事を配膳して分け与えています。
メリトーネの仕事は少々、雑で、人々は口々に文句を言い、
「最近修道院に入ったラファエレさんの方が優しいですぞ」
なんてことも言われるので、メリトーネは、グアルディアーノ神父がたしなめるのも聞かず、ついには人々を追い払ってしまいます。
メリトーネとグアルディアーノ神父の対話になります。
メリトーネは、ラファエレがどうも苦手です。
あの暗い雰囲気、独り言、眼差し…。どうも外国人の血が入っている人のようだ。
勘が良い方はお気づきでしょうか、そのラファエレこそ、修道院入りを決意したドン・アルヴァ―ロでした。
修道院の呼び鈴が鳴り、誰かやって来たようです。
案内されてはいってきたのは、ドン・カルロ!
彼はとうとう、アルヴァ―ロがラファエレ神父と素性を偽ってここにいることを突き止めたのです。
やがてやって来るアルヴァ―ロ。
ここから、ヴェルディによるテノール・バリトン二重唱屈指の名曲が始まります。
そこにいたカルロを見て驚くアルヴァ―ロ。
カルロは再びアルヴァ―ロに決闘を迫ります。
アルヴァ―ロはあくまで拒否するので、カルロは、「この臆病者!」とか、「お前の汚れた生まれが現れてるな」など、幾度も挑発します。
そのたびに怒りが湧いてきそうになるのを必死にアルヴァ―ロは抑えます。
しかし、カルロがこれでもかという罵声を浴びせながら、同時に平手打ちをアルヴァ―ロにくらわすと、とうとうアルヴァ―ロも堪忍袋の緒が切れて、決闘を承諾、戦いの場へ2人は走っていきます。

・第2場
最後の場面です。
先ほどの修道院にある岩山の奥、洞窟です。
数年前からここに1人でレオノーラが人目を避けて、修行中の修道士としてここに暮らしています。
夜です。
彼女は一人、神に祈っていますが、しかしどうしても、アルヴァ―ロのことが頭から離れていきません。
あれから何年もたったというのに…。
そして彼女は何度も、「運命が…!運命が!」と口にします。
なんという”運命の力”でしょう。
この静謐な暮らしを脅かす者には、呪いを!呪いを!と、激しい口調で最後は歌い上げます。
レオノーラが歌うこのアリア、
「Pace, pace!! 英語でpeace 平和を!」
という歌い出しでこの曲は有名で、多くのソプラノ歌手がコンサートでも取り上げています。
歌い終えるとレオノーラは、洞窟の小屋に入り、鍵を掛けます。
すると舞台裏から、カルロの叫び声が聞こえます。
よりにもよって、アルヴァ―ロとカルロが決闘していたのは、この洞窟の近くでした!
またしても”運命の力”がはたらきます。
アルヴァ―ロは決闘に勝ち、カルロは瀕死の状態です。
アルヴァ―ロは、聖職者としてあるまじき、決闘という行為をしてしまったので司祭としてカルロの臨終を看取る資格はありません。
代わりに誰か司祭をと、アルヴァ―ロは、ここに1人で修行している僧侶がいるという噂を聞いていたので、洞窟にやって来ます。
小屋のドアをノックして、
「死にゆく男へのお慰めをお願いします!」と呼びかけますが、中からは、
「私にはできません」という返事が。
とうとう中から出てきたレオノーラ、それを見たアルヴァ―ロ!
ついに第1幕から何年もの月日を経て、二人は再会したのです!
しかしなんというシチュエーションでしょう。
アルヴァ―ロがたった今手にかけたのは、目の前にいる恋人の兄なのです。
兄の元へ急ぐレオノーラ。
しかし舞台裏からは今度はレオノーラの叫び声がします!
何だ!?
舞台裏から、レオノーラが、グアルディアーノ神父に支えられて戻ってきます。
彼女は傷を負っている!
カルロは、死ぬ前に最後の力を振り絞って、妹に刃を突き立てたのでした…。
今にも息絶えそうなレオノーラを見て、思わず神へ呪いの言葉を口走るアルヴァ―ロ。
そんな彼をグアルディアーノ神父は諫めます。
「神を呪ってはいけない…。」
死にゆくレオノーラを看取って、悲しみに打ちのめされるアルヴァ―ロ。
そんな彼をグアルディアーノ神父は慰めつつ、2人でレオノーラの魂が天へ昇っていくのを見守り、静かにオペラ全体の幕が下ります。

いかがでしたでしょうか。
実はこのラストはスカラ座での1869年改訂版でのもので、最初のロシア初演版では、絶望したアルヴァ―ロが山から身を投げて自殺してオペラ全体が終わります。
初演版のラストが、原作に基づいたものなのですが、ヴェルディがこれではあまりにも悲惨だ、ということで、改訂版の形になりました。
本当にタイトル通り、登場人物たちが”運命の力”に翻弄されていくお話で、読んでいくとつらいものがありますが、これがヴェルディによる素晴らしい音楽がつけられることで、極上のオペラ作品に仕上がっています。
このオペラからいくつもコンサートで歌われる曲があり、聴いていて一切飽きの来ない作品です。
皆さんもぜひ「運命の力」、検索などして、触れてみてください。
ありがとうございました。
髙梨英次郎でした。
参考文献(敬称略)
小畑恒夫「ヴェルディ 人と作品シリーズ」「ヴェルディのプリマ・ドンナたち」
ジュゼッペ・タロッツィ「評伝 ヴェルディ」小畑恒夫・訳
永竹由幸「ヴェルディのオペラ」
髙崎保男「ヴェルディ 全オペラ解説」
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