オペラ全曲ざっくり解説の文字起こしです。
聴きながら読むと分かりやすい! 音声はこちら↓

こんにちは!テノール歌手の髙梨英次郎です。
本日もオペラをざっくり解説して参ります。
オペラって面白いですよ!
今回は前回に引き続いて、ヴェルディ作曲19作目のオペラ「ラ・トラヴィアータ」、またの名を「椿姫」の内容とストーリーです。

全3幕
時代設定は1700年ごろと楽譜に記載がありますが、現在は、ヴェルディが想定していた19世紀半ばの物語として上演されることがほとんどです。
場合によっては、2000年代現在の物語として演出されることもあります。
登場人物
ヴィオレッタ・ヴァレリー:パリに生きる高級娼婦
アルフレード・ジェルモン:プロヴァンス地方出身の若者
ジョルジョ・ジェルモン:アルフレードの父。プロヴァンス地方の地主で役人
この3人が主要人物です。
その他に
ガストン子爵:アルフレードの友人
フローラ:ヴィオレッタと同じく高級娼婦
ドゥフォール男爵:ヴィオレッタのパトロン
アンニーナ:ヴィオレッタの小間使い
医師グランヴィル:ヴィオレッタのサロンの客であり主治医
ドビニー侯爵:フローラのパトロン
等の人物がいます。
オペラは短めの前奏曲で始まります。
その旋律は優美で悲し気に始まり、やがてヴィオレッタが第2幕でアルフレードに愛を叫ぶ時のメロディーになり展開していきます。
このことから、このオペラの主題はヴィオレッタの愛である、と示されています。
冒頭の悲しい旋律は第3幕の前奏曲でも繰り返されますが、ある方の解釈では、主軸となる音楽はその第3幕の方で、第1幕の前奏曲は、病床にあるヴィオレッタが見た、楽しい頃の思い出を回想している、ということになるそうです。実際にそのような解釈をした演出や映像もあります。
<第1幕>
華やかな音楽とともに幕が開くと、ヴィオレッタの邸宅で夜会が始まっています。

続々集まってくる客をもてなすヴィオレッタ。
幕が開いてこれほど早く、主人公たるプリマ・ドンナが登場するのも異例なことです。

そこへガストン子爵が、1人の若者をヴィオレッタに紹介します。
その若者は名をアルフレードと言い、どうやら以前からヴィオレッタに憧れていた様子。
アルフレードの初々しい様子に興味を持ったヴィオレッタは、用意された晩餐の席で談笑を交わします。
その様子を、ヴィオレッタのパトロンであるドゥフォール男爵が苦々し気に見ています。
顔なじみのドビニー侯爵やガストンに促されて、アルフレードは有名な乾杯の歌を歌います。
アルフレードに続いてヴィオレッタも歌で返答して、盛り上がったところで、別室から踊りの音楽が聞こえてきます。
一同が移動しようとすると、突然ヴィオレッタはふらついて、座り込んでしまいます。
心配する一同でしたがヴィオレッタは、
「大丈夫、何でもないです、ちょっと身震いがしただけ。すぐに行きますから」
と言うので、みな別室に移動します。
ところが、アルフレードだけはそっとヴィオレッタの様子を見るため残っていました。
気が付いたヴィオレッタにアルフレードは、
「こんな派手な暮らしを続けていては、お身体に障ります。僕がずっとあなたのそばで、あなたを見守っていきます」
と、たどたどしく話すアルフレードを、ヴィオレッタは最初笑って冷やかしていましたが、アルフレードがさらに、
1年前からヴィオレッタを想っていたこと、その愛の大きさを素敵に歌うので、次第にヴィオレッタは心を動かされていきます。

いい感じになりそうだった所へガストンの邪魔が入ったので、ヴィオレッタはアルフレードにそっと、胸につけていた花を渡します。
恐らく椿であろうと思われますが、実はオペラではこの花が椿であるとは明言されていません。
「この花がしおれたらここに戻ってきて、明日あたりに」
遠回しな表現をヴィオレッタはしていますが、これはつまり、アルフレードがヴィオレッタの相手として認められた、ということに他なりません。
喜んだアルフレードは、有頂天になりながら、彼女の家を後にします。
やがて招待客たちもめいめい、ヴィオレッタへ挨拶して帰り、彼女一人になりました。
彼女は胸に芽生えた感情に戸惑っています。
「変だわ、E’ strano」
このE’ stranoというセリフは、オペラの各幕1回ずつ、物語の要所で出てきます。これがその1度目。
アルフレードの誠実な告白に、今まで感じたことのなかった気持ちがヴィオレッタにわいてきたのでした。
これが真実の愛?
そしてアルフレードが歌った愛の旋律を彼女も繰り返します。
しかし、ふと我に返るヴィオレッタ。
バカね、バカよそんなの!
私は哀れな女!
1人、パリと呼ばれる砂漠の中で見捨てられた女。
それなら私はいつも自由に、喜びから喜びへ飛び回っていなければいけないのよ!
そのように自嘲するヴィオレッタでしたが、外からアルフレードが、またあの愛の旋律を歌っているのが聞こえます。
ヴィオレッタはまた戸惑うものの、激しくも華やかに、揺れ動く感情を歌うのでした。
ヴィオレッタが歌うこのアリアは、ソプラノのアリアにおいて、恐らく最も人気で、かつ最も難しいものとして、3本の指に入るほどの名曲なのではないでしょうか。
華やかなこのアリアで、第1幕が終わります。
<第2幕>
・第1場
パリ郊外にある自然に囲まれた別荘で。

ヴィオレッタはパリでの派手で自堕落な生活を捨て、アルフレードと3か月前からここで幸せに暮らしています。
アルフレードが、今の幸せな状態を喜び、まるで天国で暮らしているようだ、とアリアを歌います。
しかし女中のアンニーナが、パリへ家財道具や馬車を売り払いに行っていたことを知ると、アルフレードは、ここでの生活には思っていた以上にお金がかかることに初めて気が付きます。
アルフレードは今まで親の仕送りや母の遺産で暮らしていて、経済感覚が乏しかったのです。
自分がパリに行って、何とかしてくる!と勇んで出発します。
入れ替わりにやって来たヴィオレッタはアンニーナから、アルフレードがパリへ行って、夕方には戻ってくるだろう、ということを聞いてつぶやきます。
「それは変ね。 E’ strano」
ここで3つあるうちの2つ目、第2幕の「E’ strano」が出ました。
ヴィオレッタの元には高級娼婦仲間のフローラから、夜会の招待状が届いていましたが、今のヴィオレッタは行く気がありません。
そこへ、1人の男性が訪ねてきたとの知らせ。
ヴィオレッタは、財産の売却相手が来たと思いましたが、その男性は自分を、
「私はアルフレードの父親です」
と名乗るので、彼女は驚きます。

ここから、オペラ史に残る、屈指の二重唱が始まります。
さらに父ジェルモンは、
「あなたに堕落させられた愚か者の父親です」
と、ヴィオレッタに対して失礼なことを言うので彼女もいささかムッとして、
「あなたは誤解なさっています。これをご覧ください」
と、ある書類を父ジェルモンに見せます。
ジェルモンは、2人がここで暮らしていくためのお金はアルフレードが全て出していると思っていました。
父親である自分が仕送りしたところから出していると思い込んでいたのですが、ヴィオレッタから渡された書類には、ヴィオレッタが自分の持ち物を売却した証拠が記されており、アルフレードが出していたわけではなく、ヴィオレッタが全てのお金を出していたことが書かれていました。
ジェルモンの誤解は解けます。
ヴィオレッタはアルフレードとの愛が純粋なものである、とジェルモンに訴えかけます。
ジェルモンは一瞬心を動かされたものの、しかし、
「貴女には犠牲を払っていただかなくてはなりません、私の2人の子どものために」
と、ヴィオレッタに告げます。
アルフレードには妹がいました。(姉か妹かはっきりしませんが、ここでは妹としておきましょう)
その妹は間もなく結婚する予定なのですが、兄であるアルフレードが、はっきり言えば、高級娼婦(だったにしても)と付き合っているとなると、娘の相手が結婚を取りやめてしまいかねない、とジェルモンは言います。
「わかりました、それなら少しの間、私は彼から離れていましょう」
「いえ、それでは十分ではありません。」
ジェルモンはヴィオレッタに、アルフレードと永久に分かれることを要求します。
ジェルモンの存在は、田舎紳士の古風で頑固な価値観を体現したものだと言われています。
ですが、どうでしょう、自分の子供が、社会的にあまり良いとされていない立場の人と付き合っているとなったら…。
親として心配しないでいられるでしょうか。
ここに、ジェルモンを悪とは言い切れない、実社会の難しさが現れているような気がします。
ヴェルディもその伴侶ジュゼッピーナも大いに悩まされた、排他的価値観。
現代でも少なからず問題になるテーマではないでしょうか。
アルフレードと永久に別れるようジェルモンに言われて、必死に抵抗するヴィオレッタ。
いかにアルフレードを真剣に愛しているか、果ては自分が病に侵されていることまで明かします。
しかし、ジェルモンには響きません。
逆に、投げかけられたジェルモンの言葉がヴィオレッタに刺さってきます。
「やがて時がたって、若さも失われれば、愛は冷めますよ。
よく考えてください。そういった関係性は神から祝福されていないものなのです。
そんな惑わされるような夢はお捨てなさい。
貴女はまだお若いのだから、やり直せますよ」
次第に諦めの気持ちがヴィオレッタの心に広がっていきます。
「一度身を落とした女は、やり直す希望を持つことは許されない…。」
ヴィオレッタは、アルフレードと別れる決心をします。
ジェルモンは感謝を述べて、いったんその場を離れます。
1人になったヴィオレッタは、まず1通手紙を書いて女中のアンニーナに渡します。
その宛先を見て驚くアンニーナ。おそらく、宛先はかつてのパトロン、ドゥフォール男爵です。
やめていた仕事に戻らざるを得ない、ということでしょうか。
そしてもう1通、アルフレードに書かなくては…。
悩んだ末、書いた手紙に封をすると、ちょうどそこにアルフレードが帰ってきます。
「何をしているんだい?」
ヴィオレッタは慌てて手紙を隠します。
アルフレードは父親がここに到着したらしいとわかって、そわそわしています。
父親がここに来た意図を何となく察しているのでしょう。
ヴィオレッタはジェルモンと約束した以上、会っていたことも、アルフレードとの別れを約束したことも、アルフレードには言えません。
やがて感情が抑えきれなくなったヴィオレッタは、泣きながら、アルフレードに悲痛な愛を叫んで、二人の愛の巣を後にします。
ここで歌われるのが、第1幕前奏曲でメインテーマとなるメロディーです。
ここの音楽はオペラ全体の真ん中に置かれていて、まさに山の頂点となっているかのようにドラマティックな表現がなされます。
1人残ったアルフレードのもとに、ヴィオレッタからの手紙が届きます。
馬車に乗る前すぐに、ある村人に手紙を渡していたようです。
そこには、「アルフレード、このお手紙があなたのもとに届いたときには…」
この先は読まれませんが、アルフレードは絶望の叫びをあげます。
もちろん、別れの文言が書かれていたのでしょう。
そこへ、父ジェルモンが姿を現します。
「父さん!!」
「息子よ!」
ジェルモンは、息子を慰めようと、故郷プロヴァンスの様子を、また、アルフレードがいなくなってからいかに実家が寂しい雰囲気に包まれたかを切々と歌います。
「プロヴァンスの海と陸」という歌い出しで有名なバリトンの名アリアです。
しかし、傷心のアルフレードに父の声は届きません。
アルフレードはテーブルの上にあった、高級娼婦仲間フローラからの手紙を見つけて、ヴィオレッタがこの夜会に来ることを確信し、制止する父の手を振り切ってパリへと走っていきます。
・第2場
フローラの邸宅で派手な夜会が行われています。

フローラやドビニー侯爵、医師グランヴィルは、ヴィオレッタとアルフレードが別れたらしい、ヴィオレッタはドゥフォール男爵の元に戻ったようだ、と噂しています。
そこから、パーティの余興が女声合唱、男声合唱の順に繰り広げられます。
ヴィオレッタの物語が、ここで少し休憩、お口直しといった感がある場面です。
そこへアルフレードが到着。皆、驚きます。
はた目には、ヴィオレッタと別れたことを気にもしていない様子に見え、彼を迎えてカード遊び、ギャンブルをしようということになります。
少し遅れてヴィオレッタが、ドゥフォール男爵に連れられてやって来ます。
アルフレードの姿を見つけて驚くヴィオレッタ。
男爵は
「貴女の方からアルフレードに話しかけたりしないように」
と、アルフレードへの敵意を表します。
アルフレードはヴィオレッタのことを見もせず、カードの勝負に勝ち続けています。
「ここで得たお金で、田舎で楽しく過ごそうと思います。僕から逃げて行った誰かさんを連れてね。」
と、ヴィオレッタに聞こえよがしに嫌味を言うので、その場にいた友人ガストンもさすがにアルフレードを諫めます。
アルフレードの態度に憤った男爵は、アルフレードにカードのサシでの勝負を挑みます。
受けて立つアルフレード。
勝負は、アルフレードが勝っていきました。
やけくそになっているアルフレードに悪運がついてきているのでしょうか。
夕食の用意が出来たと知らせが来たので、勝負はお預けになります。
「何なら他の勝負をしてもいいですけど」
と、決闘してもいい、みたいなことを(アルフレードは)匂わせて、険悪この上ない雰囲気です。
当然、ヴィオレッタは気が気でありません。
彼女はそっとアルフレードを呼び出し、この場から去るよう懇願します。
「貴女が僕についてきてくれるなら!」
とあくまで譲らないアルフレード。
ヴィオレッタは言います、
「私はあなたの元から去ると誓ったのです、その権利がある方に」
それは父ジェルモンのことですが、ここでは言えません。
「それは男爵のことか!」
「…そうです」
「やつを愛しているのか!?」
「ええ、愛してるわ!」
アルフレードは嫉妬と絶望に狂ってしまいます。
「皆さん、お集まりください!!」
何事かと、皆が集まってきます。
「皆さん、この女性をご存知ですよね。彼女が何をしたかと言いますと、
僕との生活のために彼女は財産を使い果たしました、
僕はバカでした、何も知らなかった、
ですから、この汚れを拭い去りたいのです、
ここで皆さんを証人として、
借りたお金を清算したいと思います!!」
そうしてアルフレードは、賭けで買ったお金をヴィオレッタに向けて投げつけて、思いっきり彼女を侮辱するのでした。
ヴィオレッタは思わず気を失ってしまいます。
アルフレードの行動に皆は怒りをあらわにします。
そして、そこへ父ジェルモンが姿を現し、アルフレードを叱責します。
後悔するアルフレード。
叱責したとはいえ原因は自分にあるので複雑なジェルモン。
そして気が付いて、いつの日か私の愛情を知る時が来るでしょう、と静かに歌い出すヴィオレッタ。
ここからフィナーレの壮大な音楽になっていき、第2幕が終了します。
<第3幕>
前奏曲が演奏されます。
冒頭で述べたように、第1幕の前奏曲と同じ旋律が、調を変えて、音楽も一層悲し気に展開していきます。
今までの物語は、この時点からの回想であった、と捉えることもできます。

幕が開くと、ベッドに横たわるヴィオレッタ。
第2幕から1か月たって、肺病が悪化してしまいました。
そばにはアンニーナだけがついています。
派手な家具は売り払われ、部屋は寂し気です。
医師グランヴィルがやって来ます。
グランヴィルはアンニーナにそっと、ヴィオレッタの命はもう数時間しかもたないであろうことを告げます。
今日は謝肉祭カーニバル。パリの街は大騒ぎです。
ヴィオレッタはアンニーナに、残った少しのお金を貧しい人たちに寄付するよう申し付けて、1人になります。
そして何度も読み返した手紙を再び読みます。
それはアルフレードの父ジェルモンからでした。
「アルフレードと男爵の決闘が行われ、アルフレードは決闘に勝利したものの、国外へ逃げました。
男爵は一命をとりとめました。
貴女の犠牲は私からアルフレードに伝えました。
彼も私もいずれあなたの元へ、許しを請いに参ります。ジョルジョ・ジェルモン」
ヴィオレッタは叫びます。
「遅いわ!待っても待っても彼らは来ない。」
そして、「さようなら、過ぎ去った美しくにこやかな夢よ」と、こちらも有名なソロを歌います。
この歌の途中、タイトルの「トラヴィアータ」が出てきます。
外からは、カーニバルで賑わう声が聞こえてきます。
その直後、息せき切ってアンニーナが走りこんできます。
「奥様、くれぐれもお体に障らないように、心の準備をしてください、大いなる喜びの!」
「何ですって、彼なのね、アルフレードが来てくれたのね!」
そして、ついにアルフレードがヴィオレッタの元へ到着します。
「ヴィオレッタ!」「アルフレード!」
二人は抱き合います。
心からの許しを請うアルフレード。
許すだなんて、私が悪いの、でも愛が私を変えてくれた!
そしてアルフレードが優しく歌い出します。
「パリを離れよう、人生を共に送ろう」
美しい二重唱が歌われます。
やがてヴィオレッタは、力を振り絞って、教会へ行きたいと言い出します。
神様の前で、アルフレードと結婚の誓いを立てようというのです。
しかし、彼女には上着を着る体力さえ残されてはいませんでした。
絶望し、生きていたい!と叫ぶヴィオレッタ。
そこへ、父ジェルモンもやって来ます。
彼女をこのように追い詰めてしまったことに責任を感じ、やはり彼女に許しを請います。
再び横たわるヴィオレッタ。
彼女はアルフレードに、あなたの将来のお嫁さんにこれをお見せしてね、と自分の肖像を渡します。
嘆く一同。
すると、彼女はふいに立ち上がります。
「変だわ E’ strano !」
ここで最後の「E’ strano」です。
「身体から苦しみが取れて、私の中に力が湧いてきた、
私は、私は、生き返るのだわ、うれ…し…」
倒れるヴィオレッタ。
皆が駆け寄ります。
医師が告げます。
「息を引き取られました…。」
こうしてヴィオレッタの人生とオペラ全体の幕が下ります。

いかがでしたでしょうか。
いかにこの物語が全体を通して、ヴィオレッタ1人にフォーカスが集まっているか、お判りいただけたかと思います。
このヴィオレッタという役は、第1幕では華やかで軽やかな歌唱技術が要求され、第2幕、第3幕ではドラマティックな表現力が必要とされる、イタリアオペラにおける究極のソプラノ役であると言えます。
イタリアものをレパートリーにするソプラノ歌手なら恐らく誰しもが勉強することになる役なのではないでしょうか。
アルフレードは恋人役であり、ヴィオレッタにとって、どちらかというと暗い世界に差し込んだ光のような存在。
ジェルモンは、ヴィオレッタに立ちはだかる壁として、世間を代表するかのような存在です。
第3幕に関して、アルフレードやジェルモンが駆けつける、というシーンは原作にはありません。
オペラにおいて、全てが死に瀕したヴィオレッタが見た妄想、とする演出もありますが、オペラでは僕は、ヴィオレッタの愛が最後くらい報われてほしい、その様子を見たい、と思っています。
あくまで、原作とオペラは別世界なのです。
現代でも上演され続けるこの作品には、それだけ、多くの人を捉えて離さない、普遍的なテーマが込められているということでしょう。
観たこと聴いたことのない方には、ぜひ触れていただきたいです。
映像作品などもたくさんあります。どうぞ検索してみてください。
ありがとうございました。
髙梨英次郎でした。
参考文献(敬称略)
小畑恒夫「ヴェルディ 人と作品シリーズ」「ヴェルディのプリマ・ドンナたち」
ジュゼッペ・タロッツィ「評伝 ヴェルディ」小畑恒夫・訳
永竹由幸「ヴェルディのオペラ」
髙崎保男「ヴェルディ 全オペラ解説」
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