オペラ全曲ざっくり解説の文字起こしです。
聴きながら読むと分かりやすい! 音声はこちら↓
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こんにちは!テノール歌手の髙梨英次郎です。
本日もオペラ全曲をざっくり解説して参ります。
オペラって面白いですよ!
今回は、ヴェルディ作曲「ルイザ・ミラー Luisa Miller」です。
このオペラには、イタリアオペラを歌うテノール歌手なら必ず1度は勉強する、名アリアがあります。
第2幕で歌われる「穏やかな夜に」がそのアリアで、多くの名テノールが歌い継いできました。
僕も大好きなアリアです。
オペラ全体のストーリーとしても、これぞロマン派といった悲劇で、文字で読むだけだと、何でそんなことに…と思わずにはいられないのですが、音楽や歌と共に触れると、胸に迫るものがある素晴らしい作品です。
まずは作曲の経緯についてお話します。
前作「レニャーノの戦い」( https://tenore.onesize.jp/archives/97 ) の台本を書いたのは、ベテラン作家のカンマラーノでした。
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「レニャーノ」は本来、ナポリのサン・カルロ劇場で上演されるはずだったのですが、世の中の情勢が不安定になったので不可能になりました。
1848年夏、パリに戻ったヴェルディは、ナポリ、サン・カルロ劇場との仕事に乗り気でなくなってしまい、契約の破棄を劇場側に打診します。
ですが劇場側としては、何としてもヴェルディとの契約を取り付けなくてはなりませんでした。
一世を風靡したロッシーニはこの時すでに引退し、ドニゼッティはこの年の4月に50歳でこの世を去ってしまっていました。
なので、伝統と格式のサン・カルロ劇場としては、今をときめくオペラ作曲家ヴェルディにどうしても新作をナポリで発表してもらいたいと思っていたのです。
そこでサン・カルロ劇場の首脳は、台本作家カンマラーノに、
「マエストロ・ヴェルディが契約破棄なんて言うのは、あんたがちゃんと台本をヴェルディ先生によこさないからだ。このままならあんたを契約違反で訴えて、牢獄にぶち込んでやる」
という脅しをかけてきます。
台本作家の地位や収入は、この時代、作曲家よりもかなり低いものだったのです。
カンマラーノはヴェルディに泣きついてきます。
カンマラーノには妻と6人もの子供がいて生活も苦しく、ヴェルディとしては一回りほど年上であるカンマラーノの台本の腕に、信頼と尊敬の念を抱いていましたので、ヴェルディは劇場側の対応に腹を立てつつも、ナポリで新作を発表することを決めます。
題材はシラー原作の「たくらみと恋」に決まりました。
古い和訳だと、「たくみと恋」という題名にもなっているようです。たくらみのことをたくみということもあったようですね。
シラーの作品は「ジョヴァンナ・ダルコ」( https://tenore.onesize.jp/archives/90 ) 「群盗」( https://tenore.onesize.jp/archives/94) に続いて3作目です。
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それまでのイタリア万歳!な作品や、盗賊になってどうのこうの、といった作品とは違い、貴族と平民の階級差がもたらす愛の悲劇といった様相で、ヴェルディとしてはこれまでにあまりなかった種類の題材です。
ナポリは政府の検閲が厳しかったので、ある程度人物の設定を変えて、原作にあった政治色を少し抑えましたが、ストーリーの根幹は変わっていません。
初演は1849年12月8日、ナポリのサン・カルロ劇場、ヴェルディ36歳。
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初演当時の資料があまりなく、詳細なレポートはありませんが、その後の上演回数や、各地に上演が広がっていったことから、いちおうの成功であったようです。
ですが、19世紀も後半になるとあまり上演されなくなり、テノールのアリアだけ有名となっていきましたが、戦後その価値は見直され、オペラ全曲の上演や録音などがされるようになりました。
余談ですが、この年の夏、パリを引き払って、ヴェルディと、今や内縁の妻のようになった元ソプラノ歌手ストレッポーニは、2人でヴェルディの故郷ブッセートに住み始めます。
街から出た人気オペラ作曲家ヴェルディが、結婚もしてない状態で元歌手と同棲を始めたんですって、と、田舎町ブッセートでは早くもうわさが広まります。
ストレッポーニにはヴェルディと付き合う前にできた私生児、父親不明の子どもが何人かいて、その子らは遠くの親せきなどに預けていたようですが、そういったこともあまり良くない噂として人の口に上ってしまい、だんだんと、ストレッポーニは居心地の悪さを感じるようになってしまいます。
その後の展開については、また次の機会に。
それではオペラの内容に移って参ります。
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ルイザ・ミラー
全3幕
時は17世紀前半
舞台はチロル地方、オーストリアとイタリアにまたがるアルプス山脈東側の地方で、ドイツ系住民が多く住む地域です。
主な登場人物
ミラー氏:退役軍人
ルイザ・ミラー:ミラー氏の娘
ヴァルター伯爵:この地の領主
ロドルフォ:伯爵の息子
ヴルム:ヴァルター伯爵の家臣
フェデリーカ:公爵夫人だが未亡人、ヴァルター伯爵の姪で、ロドルフォと幼馴染
オペラは長めの序曲で始まります。
非常にロマンティックな旋律を、有機的に発展させて、どこかドイツ音楽の響きも感じさせる、素晴らしい音楽です。
<第1幕>
美しい自然が広がる村にある、退役軍人ミラー氏の家の前で
今日はミラー氏の娘ルイザの誕生日です。
村人たちが集まってお祝いしようとしています。
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ルイザが姿を現しますが、何やらソワソワしています。
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ルイザと淡い恋中にある、カルロという若者がまだ来ていないから、というのがその理由なのです。
父親のミラー氏は、カルロの素性がわからないことに不安を感じ、娘が身分違いの恋に落ちてはいないか、騙されてはいないかと心配しています。
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やがてカルロが現れて、2人は喜びにはしゃいで、歌います。
やはりミラー父さんは不安そうです。
皆が教会へ祈りに行くため移動する中、1人残ったミラー氏のもとに、この地の領主ヴァルター伯爵に仕えているヴルムが近づいてきます。
ヴルムは以前からルイザに気があり、ミラー氏に1年前から彼女と結婚させてくれと頼んでいました。
ミラー氏としては、
「娘の意思を尊重してやりたい。結婚は自由であるべきだ」
と言って、ヴルムの要求をはねつけます。
こういった考え方は、平成以降の現代ならともかく、物語の舞台である17世紀にしても、上演された19世紀にしても、非常に珍しいものだったのではないでしょうか。
現実ではそのように、結婚は自由にできないことが多いからこそ、ある種の非現実的ドラマとして当時の観客に楽しまれたのかもしれません。
しかしヴルムは、
「あのカルロという男、本当はヴァルター伯爵のご子息だぞ」
とミラー父さんにバラしてしまいます。
この時代のロマン派小説などでよくある、貴族の若者が庶民の娘と恋愛する際には、若者は自分の身分を偽って、貴族であることを隠す、というお決まりのパターンがあります。
こうすることで、その恋愛はお金や地位によるものではなく純愛ですよ、と示したいわけですね。
ここでもカルロと名乗っていた若者は、実は伯爵の息子ロドルフォなのでした。
そのことを知ったミラー父さんは、やはり娘は騙されていたのか!と怒ってアリアを歌います。
場面変わって、ヴァルター伯爵の城の一室で
ヴルムが城に戻ってきて、伯爵に告げ口します。
「坊ちゃんは村娘への恋に夢中ですぞ。」
「何を考えとるんだあいつは!ここへ息子を呼んで来い!」
と言って、
「息子の幸せを考えてやっているのに、まったくあいつは!」
というようなソロを歌います。
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伯爵父さんは、息子ロドルフォを、幼馴染のフェデリーカと結婚させようとしていました。
フェデリーカは、ある年老いた公爵に嫁いでいたのですが、公爵が亡くなったので未亡人となり、彼女は公爵の財産を手にしていたので、伯爵父さんとしても、息子の結婚相手としてちょうどいい!と思っていたのでした。
子供を結婚させる姿勢は、ミラー氏と真逆ですね。2人の父親がこういったところでも対比されています。
呼び出されてきたロドルフォに、伯爵は、
「フェデリーカとの結婚話をまとめたぞ。彼女もお前のことを愛しているそうだ。彼女と結婚すれば、宮廷への道も開かれるぞ。」
「しかし父上、私には…」
「うるさい!ここに公爵夫人フェデリーカが来るから。お前の方から結婚を申し込みなさい。いいな?」
と言って、やってきたフェデリーカとロドルフォを2人にして、伯爵はその場を出て行きます。
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ロドルフォは、
「彼女の誠実さにかけてみるしかない」
と思い、なんとなく気まずい挨拶を交わした後、
「私には他に愛する女性がいます。それなのに父に強制されて、神の前であなたとの愛を誓うわけにはまいりません。」
と、なんとも馬鹿正直にフェデリーカに告げてしまいます。
すっかり愛する幼馴染と結婚できると思っていたフェデリーカはもう、怒り心頭。
その場を去っていってしまいました。
場面は、ミラー氏の家と、その前で
窓辺でルイザが”カルロ”を待っています。
遠くから狩りの声が聞こえてきます。
そこへミラー父さんがやって来て、ルイザが待つカルロは、実は伯爵の息子ロドルフォであることを明かします。
しかもどうやら、そのロドルフォは未亡人となった公爵夫人と結婚するらしく、式が準備されている。お前は騙されたんだ。
それを聞いて、ルイザは錯乱します。
家の外でこの会話を聞いていたロドルフォが、家に入り、ルイザへ、
「名前は偽っていて申し訳ない、でもこの愛は本物だ!僕が結婚したいのはルイザ、君だ!」
なんて言います。
ミラー氏はそれでも、ロドルフォの主張が向こう見ずなものにしか思えず、伯爵の怒りを買うことも恐れます。
その不安が的中して、ミラーの家になんと伯爵が手下を連れて現れます。
「その下賤な娘との不純な恋はもう終わらせろ、どうせうちの財産目当てだろう」
と伯爵が言ったことに対して、ロドルフォはもちろん、娘を侮辱されたミラー父さんも剣を抜いて怒りをあらわにします。
ミラー氏が歯向かってきたので、伯爵も怒って、
「こいつと娘を逮捕しろ!」
と命じます。
騒ぎを聞きつけて、村人たちも家の周りに集まってきました。
ロドルフォは怒りのあまり言います。
「彼女を逮捕するなら、いっそ俺がこの場で彼女を殺す!」
伯爵は、「ほう、やってみろ。」
もちろんできません。
そこでロドルフォは最後の手段に出ます。
「だったらここにいるみんなにバラしてやる。あんたがどうやって伯爵に、領主になったのかを!」
すると、途端に伯爵は青ざめて、態度を変えます。
「いや待て!…わかった、娘は放してやれ」
と言って、ミラー父さんだけを連行して去ってしまいます。
ここまでが壮大なフィナーレとなって、第1幕が終了します。
<第2幕>
ミラーの家の中
心配しているルイザのもとへ、ルイザの友達の女性たちが、ミラー氏が兵士たちに引き立てられていったことを話します。
ルイザはいてもたってもいられずに城へ向かおうとしたところ、ヴルムが現れます。
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ヴルムは、
「お前の父さんは伯爵を侮辱した罪で、重い罰が下るだろうなぁ」
と脅したうえで、ルイザにある手紙を書くよう指示します。
その内容は
「ヴルム様へ
私、ロドルフォを愛したことなどありません。
彼が貴族の息子だって私、知ってました。
でももう終わりにします。
夜、一緒に逃げましょう」
といったもので、この手紙をロドルフォの手に渡らせて、二人を別れさせようという、たくらみなのですねー。
これが、原作の題名にもなっている「たくらみと恋」の、たくらみ、というわけです。
ルイザはお父さんを救うため、泣く泣くこんな手紙を書かされるのでした。
この時代、通信手段は唯一手紙だけですから、それが見慣れた彼女の字だったら、そこに書かれていることをもう事実認定してしまう、そんな時代だったのです。
ルイザは悲しみと絶望のアリアを歌います。
しかしヴルムは手紙を書かせるだけでは飽き足らず、この手紙は自分の意思で書いたことを、伯爵と公爵夫人フェデリーカの前で誓わせようと、城へルイザを連れて行きます。
本当にひどい”たくらみ”ですね!
場面は伯爵の城
伯爵のもとへヴルムが報告に来ます。
「ルイザには手はず通り手紙を書かせて、ここに連れてきています」
「よしよし、ロドルフォめ、あんな脅しをかけおって。」
第1幕フィナーレでロドルフォがばらすと脅した秘密とは、
今の伯爵の前、先代の伯爵は山賊に襲われて命を落とした、とされていましたが、実は、先代の従兄弟に当たる今の伯爵、ロドルフォの父が、ヴルムと共に暗殺したのでした。
ロドルフォは、死に瀕した先代の伯爵から、最後の言葉として、真犯人の名を聞かされていたのでした。
なので、ロドルフォはこの重大な秘密を知っているというわけです。
そこへやってきた公爵夫人フェデリーカ。
伯爵は、
「息子がご心配をおかけして申し訳ない。でもご安心ください、そのルイザという娘はロドルフォを愛してなどいません。ここに連れてきています」
と言って、ルイザを呼び寄せます。
連れてこられたルイザは、公爵夫人の前に立たされ、恋しているのはヴルムです、と言わされます。
なんという地獄の時間でしょう。
それを聞いた公爵夫人フェデリーカは、では、ロドルフォと結婚できるのね、と素直に喜びます。
場面は変わり、城のテラス。ロドルフォの部屋があります。
1人の農夫がロドルフォに、ルイザが書かされた例の手紙を渡していました。
この農夫もおそらく、伯爵たちの差し金でしょう。
ロドルフォは農夫に、ヴルムを呼びに行かせます。
その間、手紙を読んだロドルフォは怒りと絶望、そして悲しみから、星空を眺めて、以前の美しい思い出を歌います。
これが冒頭で述べた、テノールの有名なアリア「穏やかな夜に」です。
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やってきたヴルム。
ロドルフォは半ば死ぬつもりで、ヴルムに決闘をしよう、と銃を渡します。
えええ、まさかそんなことを言われるとは思っていなかったヴルム。
空中に銃を一発鳴らして、その場から逃げ去ります。
そこへ、音を聞きつけてやってきた伯爵と家来たち。
ロドルフォは手紙の内容をすっかり信じているので、伯爵がいったん
「いや悪かった、あの娘(ルイザ)と結婚してもいいよ」
と言うのですが、いや、僕は裏切られたのです、死にます!
と、すっかり自暴自棄になっているので、伯爵は
「なら、公爵夫人フェデリーカと結婚することで、ルイザへの復讐になるぞ」
と言い、混乱しているロドルフォは、
「はい、そうします。…ああ、俺は何を言っているんだ!」
そして、ロドルフォは「婚礼と墓が一緒にやって来た!」と歌い、第2幕が終了します。
<第3幕>
場面は再びミラーの家
気分が沈み込んでいるルイザを友人たちが慰めます。
そこへ釈放されたミラー父さんが戻ってきます。
父さんは、娘が心とは裏腹の手紙を書かされたことを知っています。
なのでルイザにお礼を言うのですが、娘が妙に穏やかな様子を見て、ミラー父さんは察するんですね。娘はもう生きる気力がなくなってしまったのでは…。
ルイザはロドルフォにも手紙を書いていて、ミラー父さんがその手紙を読むと、そこには、要約すると、
「私、死にます、墓の中であなたをお待ちしています。」
というようなことが書かれていたので、父さんは驚き、切々と娘に訴えます。
「自分で死を選ぶなど、罰当たりなことしちゃいかん。墓には親が先に行くものだろう!」
ルイザは、涙ながらに自分を説得する父親を見て、自分が罪深いことを考えていたと悔いて、生きていくことを父親に誓います。
そしてミラー父さんとルイザは、この地を離れよう、と決意するのでした。
非常に感動的な、父と娘の二重唱です。
父さんは、出発の準備でもしに行くのでしょうか、家を出て行きます。
教会からはオルガンの音が聞こえます。
ルイザが神に祈りを捧げていると、彼女の背後でそっとロドルフォが登場します。
召使いに、伯爵を呼びに行かせると、懐から小瓶を取り出して、水が入ったカップに注ぎます。
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そしてルイザに近づくと
「この手紙はあなたが書いたのか?」
と尋ね、「…はい」と答えるルイザ。
それを聞いてロドルフォは、ショックでのどが焼けるようだ!と言い飲み物をくれ、とルイザに頼むと、彼女は先ほどロドルフォが何かを注いだカップを持ってきて、彼はそれを飲みます。
そして、ルイザにも飲むよう勧めて、ルイザも飲むと、ロドルフォは一言。
「これで終わった…。」
ロドルフォは彼女と心中を図ろうと、毒薬を注ぎ込んでいたのでした…。
なんとなく遠回しに、もう俺たちはおしまいだ、みたいなことを言うロドルフォと、戸惑うルイザでしたが、ついに、ロドルフォが、カップに毒を入れたことを告げると、ルイザは驚きます。
ですが、これで死ぬならもう、なにも恐れなくていい、と、ロドルフォに、
「あの手紙は私のお父さまを救うために、無理矢理書かされた、私は無実です!」
と告白します。
何だって!!
あああ、無実の君を殺すことになるなんて!!
俺が生まれたことも!俺に流れるこの一族の血も呪われてしまえ!!!
それでもルイザは優しい娘です、ロドルフォに、神様を呪ってはダメ、落ち着いて!とロドルフォをなだめようとします。
そこに、帰って来たミラー父さん。
ロドルフォを見て、
「なぜあなたがここにいる!?」
「俺はあなたの娘さんの殺人者だ!」
何だって!!
もうすでに毒は2人の体をむしばんでいます。
弱っていく娘を抱きかかえるミラー氏。
やがて天に昇っていくような音楽と共にルイザは息絶えます。
そこへやってくる伯爵とヴルム。
ロドルフォは最後の力を振り絞って、ヴルムに剣を突き立ててその命を奪います!
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そして、力尽き、ロドルフォも息を引き取りました。
そこに残ったのは、お互いの息子と娘を失った2人の父親なのでした…。
以上でオペラ全体の幕が下ります。
いかがでしたでしょうか?
何とも救いのないラストとなっていますが、こういったお話は、主人公たちの運命や行動の愚かさをあげつらうのではなく、階級や生まれの境遇の違いから起こった、ある種の寓話としてとらえて、まずはドラマティックで美しいヴェルディの音楽と歌に身を任せていただければいいのかなと思います。
そこから何回も聴いていったり、シラーの原作を読んでその文学性に触れてみたり、オペラはいつまででも何度でも楽しめる総合芸術です。
ぜひ皆さんも「ルイザ・ミラー」検索などして聴いてみてください。
ありがとうございました。
髙梨英次郎でした。
参考文献(敬称略)
小畑恒夫「ヴェルディ 人と作品シリーズ」「ヴェルディのプリマ・ドンナたち」
ジュゼッペ・タロッツィ「評伝 ヴェルディ」小畑恒夫・訳
永竹由幸「ヴェルディのオペラ」
髙崎保男「ヴェルディ 全オペラ解説」
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